information: 三田評論 10月号

慶応義塾が発行する「三田評論」 10月号に上山高史のエッセイが掲載されました。人との触れ合いが何よりもJAZZボーカリスト・上山高史の元気の源となっている様子を生の声でお聞かせいたします。

“人との関係が元気の源”

長年の“夢”であるプロ・JAZZ・ボーカルの道に再び足を踏み入れたのは、全くひょんな事からだった。退職後、仕事や個人的にお世話になった内外 の知人・友人に趣味を生かしてジャズ・ボーカルのCDを制作し、これを記念品として贈呈する事を思いたった。山下洋輔さん他の一流演奏家の協力をいただき 実現に漕ぎ着けた。この事が思わぬ展開をするに至った。“このCDを店頭で売りましょう”とこの協力者達が言い出したのである。

その昔、諸般の事情があって、ボーカルの仕事をやめ、プラント業界に入った。海外営業を担当、所長として約十五年に亘る海外勤務を含め、三十五年の 会社員生活をする。仕事柄、石油・化学会社、金融、商社、製造会社他の多くの関係者との接点を持って、興味の尽きない仕事に没頭。

しかし、いよいよ人生最後の選択を迫れる節目を迎えて、第三の人生をどのように過ごしたらよいかを考え始めた時に、なぜか最初に頭に浮かんだのが、 事もあろうにプロ・JAZZ・ボーカリスト。忘れていた“夢”が長年潜在的に脳裏に巣くっていた事に我ながら驚いた。実現は容易でなく、他の選択肢をと考 え始めた折に、“ハップニング”が起こる。前述のCD店頭販売である。この夢の実現に向け真剣に考えさせる発端であった。熟考の結果、辿り着いた結論は、 成否は兎も角、音楽活動開始。無謀な選択であったが、ライブを中心とする活動に入った。“上山丸”の船出である。

不思議にも、一旦決心すると流れが自然と動き出したのだ。諸先輩からのライブで共演のお誘い、私の唱法を気に入ってくだっさった方がライブの機会を くださったり。そのうえ、二枚目のCD発売の話が実現し、ジャズ専門誌の男性歌手人気投票で五位にランクされる等、予想外の展開であった。人生の運気がな にやら悪戯をして花咲かせたような気がしてならない。

私がライブ活動を重視したのには、“人との出会い”を楽しむ事にあった。これが的中、この醍醐味を大いに味わっている。出会った方々との関係が鎖の ように知人・友人にも及んでいて、驚く事がしばしばである。友人からの紹介で関係が広がる事もある。今年四月の日経新聞“交遊抄”に、私の事を“六十五歳 の新人歌手”として紹介してくださったSF作家の堀晃さんはそのお一人。どんな事が起こるか、人間関係への興味は尽きない。

出会った人日との良い関係に幸せと元気をいただき、正に至福の時を過ごしている。元気なうちに、ライブ活動の集大成として、ご支援くださっている方々に感謝を込めて、大ホールでコンサートを開くという目標に向け頑張っている今日この頃である。

※「三田評論」 2002年10月号(第1050号)、慶応義塾、“塾員クロスロード” P.67


「三田評論」
2002年10月号(第1050号)
発行 : 慶應義塾大学

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